『カンボジア人の自立に貢献したい!』松倉氏(YAKUSHINKAI (CAMBODIA) CO.,LTD.)

『カンボジア人の自立に貢献したい!』松倉氏(YAKUSHINKAI (CAMBODIA) CO.,LTD.)

今回は、カンボジア人自らが頑張りたいと思った時にサポートできるような環境を作りたいと、技能実習生送出機関を設立した松倉氏にお話を伺いました。松倉氏は、立ち上げて3年という中で、カンボジア人に最適なサポートができるように、日々試行錯誤を重ねながら取り組まれています。ぜひ最後までご覧ください!

カンボジアでのお仕事の内容について教えてください。

2016年に設立し、2017年から日本に行きたいカンボジア人の技能実習生送出機関として、人材育成の学校を運営しています。常時60~90名の生徒がおり、全寮制で日本語を中心とした教育を行っています。弊社の中では、男性は建設業、女性は食品製造関係の送出実績が多くなっています。

私自身は学校長として学生の指導から運営まで携わっています。教育内容は、カンボジア人が働くのはカンボジアではなく日本なので、日本語はもちろんのこと規律や時間を守ることや、挨拶・返事など日本に合わせた教育をしています。元々NGOで教育支援をしており、その時はカンボジア人に合わせた教育支援を心がけていましたが、やっぱり日本で働くということを考えた時に、日本企業のニーズに合わせた、考え方や習慣などが必要であると思い、そこを意識して生徒に教えています。一方で日本企業側には、日本の習慣や文化を押し付け過ぎずに、外国人に合わせた管理体制の構築をお願いしています。

実習生の派遣までの流れをお伺いしてもよろしいですか?

まず入学試験を受けて合格したら日本語教育をスタートします。その間に日系企業の採用募集があれば応募してもらい、採用決定後、4か月から6か月勉強し、日本へ行きます。生徒によっては、入学後すぐ合格し半年で行ける子もいれば、何社も落ちると1年程度かかる子もいます。それ以上になると、元々この学校に来る生徒は貧困層の出身者が多く、入校後はアルバイトもできないため、1年以上残る子はあまりいません。1年間無収入でも大丈夫な家庭の子が来ますので、本当に貧しい子が通うことは難しく、そこが課題でもあります。
今はコロナの影響もあり、出発が遅れてしまって1年以上勉強している生徒が増えてきていますが、平均で言えば6か月から10か月くらいで派遣される生徒が多いです。


費用に関しては、学生たちの負担を減らすため、出発直前までお金をもらわず、寮費や光熱費、食費なども無償提供しています。

途中で辞めてしまったりする方はいるのでしょうか。

弊社は厳しい学校なので、毎月20人入っても、ひどい時は2人しか残らない時もありました。クラスの雰囲気などにも左右されるので全く辞めない時もありますし、半分以上辞めてしまう時もあります。全寮制で家族と離れて生活することや、1日8時間勉強したことがない生徒にとっては体力的、精神的に辛くなって辞めてしまう事もあります。
また、弊社では入学してからしか採用試験を受けさせていません。他の学校では採用試験に合格した子だけを入学させるところもありますが、それだとミスマッチが起こりやすくなってしまうので、事前に勉強して、規則厳守なども経験してから採用試験を受けさせることでミスマッチを減らすことができると考えています。

YAKUSHINKAI (CAMBODIA) CO., LTD.立ち上げまでの経緯を教えて下さい。

高校生の頃、日本一乗車率の高い電車に乗って通学していたのですが、その時に周りの大人を見てあまり楽しそうではないなと感じ、単純に日本以外の国で働きたいなと思い海外を目指しました。今考えてみれば、その人たちは、家族のために歯を食いしばってめちゃくちゃ頑張っていた人たちなのですが、当時はまだ若くそのような考えには至りませんでしたね。

それで、大学生の頃にタイでインターンをして、教育系の学部だったこともあり教育関係の仕事に就きたいと思い、タイに駐在できる会社を対象に就活をしたのですが、うまくいかず、結局日本で働くことになりました。しかし、諦めきれず、1年で辞めて、「1度、社会のレールから外れたなら、就職活動は後でもいいか」と考え、社会人1年で貯めたお金でバックパックを担いで旅をしました。そして、旅の途中でカンボジアのフリースクールで日本語を教えてくれないかという話があったので、ビザが切れるまでの1か月間教えることにしました。しかし、気づいたら7か月以上経過しており、お金も尽きてしまったので、一旦日本に帰り、コンビニでアルバイトをしてお金を貯めて戻ってきました。

そしてカンボジアで頑張ってみようと思い、プノンペン大学の外国語研究所(IFL)でクメール語を勉強しながら学校建設のお手伝いをしました。卒業後、愛知教育大学の名誉教授の先生と企業がNGOを立ち上げるということで、声を掛けていただき、NGOの立ち上げに事務局長として8年間携わりました。教員養成校の教授の指導方法の改善、国立大学や職業訓練学校の教育改善プロジェクト、ベトナムの職業訓練校の支援などに携わりました。

次第にカンボジアも発展し、支援だけでなくて、そろそろカンボジア人が自立していかなければならないと思うようになりました。そして、躍心会の理事長と出会い、カンボジア人が頑張りたいと思った時に頑張れるような安心で安全な環境を作ろうと考え送出機関の立ち上げを決意しました。色々な方にお世話になりながら、カンボジア人の妻と一緒に会社を運営しています。

現職で一番苦労したことを教えてください。

日本の企業との実績作りと信頼構築が難しかったですね。私はずっと教育関係で仕事をしてきたのである程度良い学校を作る自信はあったのですが、技能実習生の送り出しに関しては素人だったので、企業がそんな素人に人材を頼むはずもなく、学校を立ち上げても採用試験がなく、生徒に辛い思いをさせたこともあります。しかし、その時できることを地道に最大限やって実績を作っていくことしか仕事をもらうことができないと思ったので、地道に頑張りました。少人数でも送り出していくことで、良い生徒を送出しているいう噂が広まり、色々な企業からオファーをもらえるようになり、今では採用したい企業が来てもお断りすることがあるくらいの学校になりました。

現職で一番嬉しかったことを教えてください。

送り出した生徒と日本で一緒にお酒を飲めることが一番嬉しいですね。私は、カンボジアでは鬼教官のような嫌われ役を担当しています。カンボジア人の先生は人を注意することに慣れていないこともあり、私もやりたくないのですが、厳しい教官として振る舞っていました。しかし、日本では、彼らの味方になってお酒を一緒に飲みながら愚痴を聞いたり励ましてあげたりするのが一番楽しいですし、そこで彼らの成長を感じることができることがとても嬉しいです。

松倉氏が大切にしていることを教えてください。

大切にしていることは現場に立って自分の目で見ることです。これは、職場である学校でも、送出先の企業に卒業生が配属されてからも言えます。学校では事務仕事がメインですが、一人一人、どういう子なのか企業に言えるように学生たちと関わる時間を作るように心掛けています。雇ってくださる企業にも日本人の責任者がいるからうちに決めたと言っていただけるので、細かいところまで把握することを心がけています。

また、多くの送り出し機関は送ったら終わりみたいな感じですが、私達は、送出後、受入れ企業から聞き取りをさせてもらったり、要望があればその企業に直接私が伺い、実習生と共に作業をしながら、何が問題なのか洗い出しをしながら改善策を考えたりしたこともあります。お金がかかるので全ての企業を回ることは到底できませんが、現場に行くことで、弊社の教育改善にも繋がっています。

今後のビジョンに関してお聞かせください。

「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」という私の好きな言葉があるのですが、彼らが自立できるような機会をもっと作っていかなければならないと思っています。例えば、専門的な技術や思考力など、弱いと思われる部分をもっと強化できる教育をしていきたいです。これにより、どの業種にも対応できたり、カンボジアに戻ってきても活かすことができたりすると思います。

これからカンボジアでビジネスをしたい日本の方にアドバイスをお願いします。

私は、日本で1年しか働かないうちに来てしまって結構苦労もしたので、日本でしっかり経験を積んでからでも遅くないと思います。逆に海外でやりたいことが明確にあれば迷わず飛び込んでもいいのかなと思います。

YAKUSHINKAI (CAMBODIA) CO.,LTD

松倉 洋海氏(学校長)

〇経歴
2006年 カンボジア移住
2008年 プノンペン大学外国語研究所(IFL)にてクメール語コース卒業
2009年 公益財団法人CIESF
2017年 YAKUSHINKAI (CAMBODIA) CO.,LTD.

【ご連絡先】
Email:h.matsukura.cjys.kh@gmail.com
電話番号:+855-89-885-001

ウェブサイト:https://yakushinkai-cambodia.com/
学校紹介ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=g78Wms24ZHQ



編集後記

カンボジア人の自立を考えて指導なさっている松倉氏のお話を聞き、送り出した後のフォローアップを日本まで訪れて行うなど、自分で現場に入り、生徒のことを真摯に考えている姿に感銘を受けました。立ち上げて3年が経ち、すでに多くの優秀な人材を送り出している松倉氏の今後の活躍がとても楽しみに感じました。

○編集者:伊藤 励

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