『学びを通して子どものワクワクを引き出したい』渡邉氏(ワンダーラボ株式会社)
現在、ワンダーラボ株式会社でカンボジア事業「Think! Think! (シンクシンク)」の代表を務める渡邉氏に、現在のカンボジア事業についてお話を伺いました!!
「世界中の子どもからワクワクを引き出す」という理念をもとに、最先端のオンライン教材を利用して、カンボジアの教育事業の変革に取り組んでいます。今の時代だからこそできるようになったオンライン教育で、政府や教育省と連携して様々な事業にも取り組んでいます。
なぜカンボジアでの仕事をお選びになったのでしょうか?
大学中にバックパックにはまって、世界中を旅していました。また、私の肌は、日本の気候と相性が悪くなぜか荒れていたのですが、暖かい所に行くと治るというのを聞いて、実際に東南アジアに行ったところ、とても調子が良くなったんですよね。これは最高だなと思い、大学時代、夏は人力車のアルバイトでお金を稼ぎ、冬になったら暖かいアジアへ行くという生活をしていました。そこからだんだんと移動するのが面倒くさくなり、それならばアジアに移住してしまおうと思ったんです。初めはフィリピンでエコツーリズムの立ち上げに携わったのですが、あまりうまくいきませんでした。その際にカンボジアでもエコツーリズムの仕事があると聞き、カンボジアに乗り込んでいきました。
東南アジアのすべての国を見た中で、なぜその2か国を選んだのでしょうか?
東南アジアの中で住みたいと思ったのが、手つかずの自然があるフィリピンかカンボジアの田舎だったんですよね。元々大きな都市はあまり好きではなくて。正直、縁があったからだと思います。タイでもローカル地域に踏みこみましたが、あまりそこの人たちと仲良くなれる機会がありませんでした。
しかし、カンボジアとフィリピンでは、ローカルな住民と仲良くなり、その人達に会うのもバックパッカー時代の1つの楽しみでした。あとは、バンコクだと水が合わなかったのか自分の肌の調子が良くなくて。カンボジアとフィリピンの水や食べ物は自分の肌に合い、心地よいと感じたので、この2か国を選びました。
なぜエコツーリズムをやろうと思ったのですか?
元々陸上やキャンプのお兄さんなどをやっており、自然の中で体を動かすということがとても好きでした。そのため、これでメシを食っていきたいという思いが強くありました。そこで、東南アジアの自然を舞台に何かできればと思い、エコツーリズムを選びました。
ワンダーラボに入社されるまでの経緯を教えてください。
私は、元々カンボジアの高原都市みたいなところでエコツーリズムの開発と共に大学でITや日本語を教えていました。そこに、現在の会社の社長が来て、社長と話すうちに仲良くなり、プライベートでもカンボジアの子供たちに教えに行きました。その中で、意気投合して一緒に働いてみたいと思い現在の会社に入社しました。
ワンダーラボの一番の強みは何ですか?
私たちの一番の強みは、一見、遊びのようだけど、実は勉強の教材であって、遊び感覚で子どもの思考力や学ぶ意欲が育まれる点です。子どもが学びの楽しさを感じる「ワクワク」を引き出すことを意識しています。
どのようなサービスを提供されていますか?
好きな事に没頭することで、学ぶことの楽しさを自然と身に着けることができるような教材やサービスの提供を心がけています。
具体的に2つご紹介すると、
1つ目は、JICAとカンボジア政府と提携して、弊社のアプリケーションを公立学校に導入してもらっています。このアプリはWindows, iOS端末、Android端末で利用可能です。アプリにはAIが入っていて、個人のレベルに合わせて難易度自動調整ができ、自動でカリキュラムを選択してくれるシステムとなっています。
2つ目に塾があります。主に富裕層向けの塾となっており、料金は1時間20ドルくらいです。最近では、新型コロナウイルスの影響もあり、私立学校から提携のお申し込みをよく頂くようになりました。
また、日本でも同じようにサービスを展開しており、いくつかの私立学校や、三重県全土でシンクシンクの教材を導入して頂いています。
このサービスを通して子供達にどのようになって欲しいですか?
本来持った能力で本当に人生を楽しんでくれるような子ども達に育ってほしいと思っています。近年、日本においては、考える力をつけるようなプログラムが重要視されるようになってきました。しかし、カンボジアでは、厳しく強制的に暗記させているのが現状です。その教え方は、工場で働く人材には良いのかもしれません。しかしこの先、世の中がどう変わるか分からない中でも、我々のサービスを通じて知的ワクワクに没頭した子どもたちは、自分たちの力で予想もつかないようなイノベーションを生み、自らの望むワクワクする未来を切り開いていってくれると信じています。
事業の中で一番大切にしていることは何ですか?
私は、子ども達だけでなく、スタッフや保護者にも「ワクワク」してもらえることを大切にしています。大人たちが「ワクワク」していなければ、子ども達の「ワクワク」を引き出すことは、難しいと思っています。なので、スタッフに対しても、指示せずに自分の好きな事や仕事を見つけ、「ワクワク」して取り組んでもらい、子ども達にも自ら考えて問題を解決できた時の「ワクワク」した感情もってもらえるように心がけています。そのような人が増えれば世の中ももっとハッピーな世界になると思います。
事業の中で大変だったことは何ですか?
この事業をカンボジアでやるのは早すぎて、考え方を浸透させるに苦労しています。日本のように思考力を伸ばすような教育ではなく、まだ、暗記中心の教育なため、カンボジアである程度教養のある方などは分かって下さるのですが、いざ、マーケットに出そうとすると、全ての人たちに理解していただくのはとても難しいですね。実際にカンボジアで流行っている教科書は、読み書き計算のための識字率などを向上させるためのものです。
なので、その読み書き計算ができた後は、、、っていうところを、カンボジアの人にどう理解してもらうかが弊社のプログラムを広める鍵です。
現在は、思考力の重要性を伝えるために様々な取り組みをしています。メインの事業をJICA、教育省と共に協力してやっており、現在、カンボジア国営テレビや教育省チャネルでオンライン授業を放映しています。その視聴者数は毎回2から3万人おり、政府のカリキュラムにも入れてもらうことで、シンクシンクを全地域の方に認識してもらうことを進めています。この活動でカンボジア全土の人に広く弊社のサービスを認知してもらえたので、今は少し富裕層の子ども達が通う私立学校にアプローチしている段階です。
新型コロナウイルスによる変化を教えてください。
対面式ができないので、すべてオンラインになりましたが、子ども達は、パソコンの前でじっとしていられず、オンラインだと難しい所もあります。しかし、これを機にシンクシンクの教材に興味を持ってくださる学校が増えました。
去年、シンクシンクの営業で中流の私立学校に営業に行った時は、「学びに学年は関係ない」と言っても、まったく理解してもらうことができませんでした。しかし、最近は手のひら返しですよね。「まさにこのオンラインの時代にシンクシンクの教育方法が必要だね」という感じで、古い考え方を新しい考え方に変えようとするようになり、我々の話を聞いてくれるようになったんですよね。長い目で見ると、新しい方向に向かっており、悪い影響だけではないと思います。
今後、カンボジアの教育をどのようにしていきたいですか?
暗記中心の社会、先生から言われたことだけをやっていればいいという状態から、自分の頭で考えて好きな事に没頭して、ワクワクしながら、人生を切り開いていける子どもに育つような社会にシフトしてほしいと思います。
保護者も教育の知識があまりなく、「体罰が教育」と思っているところもあり、子どもとの接し方がよく分かっていない親が多いので、そういうのが変わっていくきっかけになれたらと思っています。
人生を通して実現したいことは何ですか?
子どものワクワクを引き出したいとか言っていますが、大人がワクワクした人生送ってなかったら意味がないと思うので、生涯自分のワクワクすることを追求したいと思っています。今はカンボジアの人に自分の作った製品を届けてワクワクしていますが、次は南の島を買って、シンクシンクアイランドと名付け、1から開墾して自分の島を築き上げたいですね。「学びとは遊びである」の延長で「遊び=働く=人生」みたいな感じで常に遊び続ける事が大切だと思います。私たちが遊びのように働く事ができなければ、子ども達も遊びのように学ぶことはできないですよね。
ワンダーラボ株式会社
事業内容 :「Think! Think!」
渡邉 大貴氏(カンボジア代表)
Email :info@wonderlabedu.com
所在地 :〒113-0033 東京都文京区本郷3-32-7東京ビル6F
ウェブサイト :https://wonderlabedu.com/
編集後記
カンボジアの教育の先駆けとなる事業を展開されている渡邊氏のお話を聞き、カンボジアの子ども達の未来を真剣に考え取り組む姿に感銘を受けました。渡邊氏の教育内容に興味がある方は、ぜひご連絡してみてください。熱いお話ができると思います。