『カンボジア医療の向上を目指して!』神白先生 (ジャパンハートこども医療センター)

現在、特定非営利活動法人ジャパンハートで、カンボジア医療・保健活動の責任者であり、ジャパンハートこども医療センターの総合診療医として臨床業務に携わっている神白(こうじろ)先生にインタビューをさせて頂きしました。

〇経歴
~2007年 医学部卒業後、沖縄県で地域医療に従事
2007年 ジャパンハートのボランティア医師としてミャンマーでの活動に参加
2010年 長崎大学病院熱研内科に所属し、熱帯医学・感染症・呼吸器診療、医学生・研修医教育に従事
2011年5月 ジャパンハートの理事に就任
2016年5月 ジャパンハートがカンボジアに設立した病院で長期ボランティア・スタッフ医師として活動
2018年4月 カンボジア病院事業責任者に就任

Q:業務内容について教えてください
A:NPO法人ジャパンハートのカンボジア医療・保健活動の責任者であり、カンボジアのジャパンハートこども医療センターで総合診療医として臨床業務に携わっています。現地のカンボジア人医師や常駐している日本人医師のコンサルトや、指導などを主に行っています。また、病院運営、マネジメント、他の医療機関、政府との共同業務なども行っています。
*総合診療医とは、簡単に言うと何でも屋で、どんな診療もする医師を指します。例えば、病院では小児科、外科、内科というように分かれていますが、総合診療医は、これらの分野を問わず診療します。

〜国際協力するなら手に職を〜

Q:国際協力や途上国での医療を志したきっかけは何でしたか?
A:海外で働きたいと意識し始めた明確なきっかけはないのですが、小さい頃から海外で働いている人たちを見ていました。知り合いに海外で支援活動をしている人もおり、そういった人達を見ている中で、「海外に行きたい」、「人の役に立ちたい」と自然と意識するようになっていました。高校の先生に言われた『国際協力をするなら手に職をつけないとダメだよ』という言葉によって考えさせられ、思いついたのが、医療だったんです。その時から将来は、医師になり国際協力をしようと決めました。

Q:学生時代は、どのような活動に力を入れていましたか?
A:大学時代は、バドミントンに熱中しており、バドミントン漬けの毎日を送っていましたが、頭の何処かには国際協力に携わりたいという思いがありました。サークル活動の一環でフィリピンの大学生と交流し地域医療を見学したり、タイで水道パイプを作り繋ぐような、現地の水へのアクセスを改善するワーキングキャンプに参加したり、ミャンマーの地域を訪問するワーキングキャンプの際にヘルスセンターを見学させてもらったりするなどの経験をし、途上国での医療を目の当たりにしました。常に行けるところには行こうというような心持ちで参加し始めたのがきっかけでした。

Q:途上国での医療と先進国での医療の大きな違いはどんなところですか?
A:大きな違いは、地域によって医療レベルが大きく違うことが挙げられると思います。例えば、日本では地方の田舎でも、ある程度の水準を満たしている医療を受けることができると思います。しかし、カンボジアでは、首都のプノンペンで受けられる治療と地方で受けることができる治療には大きな差があるというのが現状です。これは、途上国、貧困な国になればなるほど大きいですね。

Q:このような医療の格差ができてしまう要因として教育なども大きく関わってくると思いますが、カンボジアの大学の教育体制はどのような仕組みになっているのですか?
A:最近になって教育の仕組みというのも確立されてきていますが、まだまだ整っていない状況です。1970年代のポルポト政権時代に教育システムも壊されてしまっているのでそれを一から作り直し、ようやく大学までの教育体制を整えたところだと思います。日本であれば大学在学中や卒業後に研修を受ける環境が整っていますが、カンボジアでは、医師は8年、看護師は3〜4年の大学の間はかろうじて教育や研修がありますが、卒後教育のシステムは、専門医コースのごく少数の医師のみがフランスに留学する他はほとんどありません。

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〜医師として〜

Q:カンボジアで働く中での困難はどんなことがありましたか?
A:特に大変だった事が2つあります。1つ目は、2018年に開院したジャパンハートこども医療センターの設立です。このこども医療センター設立の際は、人手も足らず、今までの業務と並行して開院に向けての準備をしていたので、人数不足の中でマネジメントするのが一番大変でした。しかし、現地のスタッフを含め、多くの人々に協力してもらい開院することができたのは得難い経験となりました。2つ目は、懸命な治療、入念な準備をして手術を行ったにもかかわらず命を救うことができなかった時です。医療現場で働いている以上このような事は避けられませんが、精神的に様々な葛藤は多々あります。

Q:大事にしている考え方、価値観などありますか?
A:言葉にするのは難しいのですが、人に優劣などはなく、一人一人が大切な役割を全うしているのだという意識を常に持っています。例えば、途上国だと「医者は、病気を治療できるから偉い」などと医者と患者さんの間に上下関係があると考えている方が多いです(日本にも昔あったと思いますが)。しかし私たちは、たまたま条件が揃ってカンボジアで医療に携わらせてもらっています。そのため、常に一人一人がそれぞれの組織、分野で大切な役割を担っているという意識を持ち感謝することを私は大切にしています。医者という役割をしているからといって、偉い、尊いわけではありません。

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〜カンボジアの医療レベル向上に向けて〜

Q:今後のビジョンについて教えてください
A:今後も臨床での教育を通して、カンボジアの若手医師の医療レベル向上に努めていきたいと考えています。カンボジアでの医療は、まだまだ教育体制が整っておらず、全体的にレベルはまだまだですが、とくに地域によって医療レベルの差が大きいのが現状です。こういった環境で働く事はとてもチャレンジングでもありますが、やりがいでもあり、今後もカンボジアの医療現場に携わっていきたいと考えています。

〇編集後記
カンボジアで実際に医療の向上に向けて取り組まれている神白先生のお話を聞き、医者として、一人の人として、“人”を大切にされている姿勢がとても印象的でした。この記事がカンボジア医療、途上国の医療について考えるきっかけになって頂けたら幸いです。今回、お忙しい中貴重なお時間を割いてインタビューを受けてくださった神白先生に深く感謝申し上げます。

〇団体概要
カンボジア
ジャパンハートこども医療センター(Japan Heart Children’s Medical Center)
住所:c/o Ponhea Leu Referral Hospital, Chaktoteus Village, Vihear Louong Commune, Ponhea Leu District, Kandal Province, Cambodia
電話番号:+855 (0) 70820607

日本
「国際医療ボランティア団体」特定非営利活動法人ジャパンハート
住所:〒110-0016 東京都台東区台東1-33-6 セントオフィス秋葉原10階
ウェブサイト :https://www.japanheart.org/activity/medical/childrens-hospital.html
     https://www.japanheart.org/

〇編集者
堀口裕生