「水産業でカンボジアと日本の架け橋に!」久保田氏(カンボジアフレッシュファーム)

今回は、カンボジアでティラピア(南国鯛)の養殖に取り組まれている久保田氏にインタビューをさせていただきました。

会社概要
カンボジアフレッシュファームでは、養殖場で魚を育てて卸すだけでなく、加工、販売まで一貫して手掛けております。安全、安心、高品質な商品をカンボジア中の日本食レストラン、イオンなどに届けています。また、カンボジア政府農林水産省水産局と深く連携し、カンボジア養殖業者のモデルとなるべく、事業にも取り組んでいます。

会社名: Rainbow Progress Enterprise Co.,Ltd
Cambodia Fresh Farm
設立: 2010年
HP: https://www.nangokudai.com/
メール: rainbow.kubota@gmail.com

Q:カンボジアに来てから、養殖業をするまでの経緯を教えて下さい。
A11年前の2009年、当時勤務していた会社がカンボジアの煉瓦工場に投資していたのですが、その工場の建設がなかなか進んでおらず、視察のために訪れたのが初めてのカンボジアでした。煉瓦工場の経営は思ったほど上手くいかず苦労した時期もありましたが、工場の池(煉瓦を作るために必要な水を貯蔵)でティラピアの養殖ができないか?というアイディアから少しずつ養殖を始めたのがきっかけです。

Q:カンボジアで養殖業を始めた理由は何ですか?
A一言で言うなら、「カンボジア産の良いものを作りたい」という思いからです。現状、ベトナム人がカンボジアへ来て、お米、野菜、果物などの国産食材を買い、ベトナム産として、国内外へ販売してしまう事が多いんです。なぜそのような事が起こるかと言うと、例えば、お米なら精米して商品にするまで数週間程かかるので、利益が手元に来るまでに時間がかかります。すぐに現金を手に入れたいカンボジア人は、商品になる前にベトナム人へ売るため、カンボジアで作られた良い物もベトナム産になってしまうのです。魚も同様に、メコン川にベトナムからの船がやって来て漁をし、カンボジアの魚をベトナム産として売られてしまう事があります。また、このようなことが起きるのは、カンボジアに食品加工場が少ない事も原因の一つです。そこで私たちは、養殖業だけでなく、その魚を加工して国内販売し、生産、加工、流通を一貫して担う仕組みを作ったのです。

Q:養殖業について日本とカンボジアで大きな違いはありますか?
Aカンボジアにも築地のような市場があり、育てた魚を集めて売るという流通の仕組みは同じです。稚魚を育てる養殖業者から稚魚を買い、大きく育てて卸すのも基本的には同じです。でも、より効率の良い生産をするための養殖場の規模や、安全な食品を生産するための浄水、水温調整といった養殖設備については日本の技術は数段上をいっています。カンボジアフレッシュファームでは、こうした日本の技術を可能な限り取り入れながら、まだカンボジアには定着していない「安全な食品づくり」を実現しようとしています。

Q:先ほどのお話でベトナムのサプライヤーが来て、売ってしまうケースが多いと話されていましたが、競合他社との差別化はどのように図っていますか?
Aプノンペンには、ベトナム系カンボジア人が多く住んでいます。野菜など様々な食品がベトナムから大量に輸入され、安く売られています。そのため、カンボジアで良い物を作っても売れず、カンボジアの産業が育ちにくい環境になっています。ベトナム産のティラピアもローカルの市場で売られており、正直申し上げて価格で勝るのは難しいです。そのため、どのように差別化を図っているかというと、カンボジア産で日本の技術を使った安心、安全な物、そして食べていただけたら分かりますが、味が違います。安心、安全、味、これを1番の売りにしています。

Q:カンボジアで養殖業をする上で文化の違い、困難などはどのように乗り越えてきましたか?
Aカンボジアに来た当初の煉瓦工場での大きな失敗要因が、村の人々を信頼し、協力し合う事ができなかったからでした。「イメージとしては、急に外国人がやってきて『工場作るから敷地内、工場には来るなよ』というようなことです。」だから、そのような所で作られた商品を買いたいとは思わないだろうし、商品も売れなかったんです。この失敗があったからこそ、村の人々と互いに協力し合おうと考えていました。とはいうものの、カンボジアの田舎の村で日本人が大きな池に20万匹の魚を放流して養殖しているわけで、養殖場には、日本のように監視カメラなどはありません。そのため、村の人々も何万匹いるうちの10匹程度盗んでもバレないだろうと考えているのではないか?と思い込み、スタッフを含め、村の人々も全員泥棒ではないかと疑っていました。しかし、現地の彼らを信じ、それに見合った報酬をあげる事で彼らとの信頼関係を築くことができました。今では、スタッフ、村人が養殖場を守ってくれるような存在になっています。

実際の養殖場の様子

現在の養殖業について
現在、イオンや日系レストラン等において、弊社が養殖した魚を取り扱っていただいております。なぜこのようなお店でカンボジア産の養殖魚を使って頂けるかというと、日本の冷凍技術によって、安心・安全な魚を提供する事ができるからです。こうした日本の技術のおかげでカンボジアの方々にも安全な魚を提供することができています。

Q:久保田さんが一番提供したい価値はなんですか?
A私がカンボジアにいる1番の理由は、日本の技術を持ってきて、日本とカンボジアを水産業で繋ぐことです。日本の技術により、商品の質を上げ、レストランに提供する事で、カンボジアの食もより多様化し向上して欲しいです。また、現在カンボジアから日本に輸出されている魚や冷凍食品がほとんどないので、カンボジアの魚、冷凍食品を日本で提供できるようにしたいと考えております。

Q:新型コロナウイルスの流行でどういった影響や変化がありましたか?
A新型コロナウイルスが流行する以前、日本への魚の輸出を予定していましたが、このような状況によりその計画は延期となってしまいました。しかし、悪い面だけでなく、良い変化もあります。日本などカンボジア国外から魚、商品が輸入される事で、カンボジア産の良い物が見直されてきています。そして、魚を育てて欲しいという声を頂く事が多くなりました。また、商品もフィレ(魚の切り身など)だけでなく、一夜干しや、ふりかけなど、すぐに食べられる加工食品も作り始めました。

 

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今後について
Q:日本の方々へカンボジアでビジネスをする際のアドバイスはありますか?
A私がカンボジアに来た2009年当時は、苦労している年長者の方々が多くいらっしゃいました。長年カンボジアで様々な事に挑戦し、幾重の困難もあったそうです。そういったことから、彼らは、若者の斬新なアイディアや新しい考え方に「やめたほうがいい」と言うかもしれません。しかし、年長者の方は、足を引っ張ろうとしているのではなく、経験からのアドバイスをして下さるわけなので、ぜひ耳を傾けてみてください。私は、若者と年長者の方々の繋ぎ役になれたらいいなと思っています。逆に年長者にも、若者に絡もうと声をかけています。と言っていたら自分が年長者になってきました。

Q:久保田さんが一番大切にしていることは何ですか?
A:自分を支えてくれているスタッフを大切にする事です。なぜなら、自分一人では何もできないからです。今は、会社を大きくするより、一人でも二人でもスタッフの家族まで養いたいという思いがあります。私のスタッフの一人は、6人姉弟の末っ子長男で、家に招いてもらった際、姉弟全員でもてなしてくれたのです。その体験から、スタッフ一人一人には多くの家族がいる事に気付きました。だからこそ、一人一人を大切にしたいです。そして、養殖業を始めてから6年間、スタッフ10人誰もやめていない事が一番の誇りです。また、このような自分の挑戦を支え、アドバイスを頂けるオーナーに対し、心から感謝しております。

Q:今後どのようにティラピアを広めていきたいですか?
A現在、私達の魚は、主に日本人の方々に食べて頂いていますが、カンボジア人の方々にも食べて欲しいという思いがあります。カンボジアの食文化を変えるつもりはないですが、「日本食」も選択肢の一つとして、週に何回か現地の人にも食べてもらえるようにしていきたいです。現在では、ふりかけの動画などを現地スタッフに作ってもらって宣伝しています。田舎の方ではパームシュガー(椰子の実の砂糖)をご飯にかけて食べているらしく、それよりも、魚の骨を使ったカルシウムの豊富なふりかけを食べてもらいたい(無料で配りたいくらい)という思いが強くあります。何かの縁があってこの国で仕事をしているわけですから、カンボジア産の物を世界に広めるということも夢の一つであり、それに向かってチャレンジしていきたいです。(腹が立つことも多々ありますが・・・(笑))