「カンボジアの良さを世界の人々に伝えたい!」浅野氏(アパレル会社)

<カンボジアで起業するまでの道のり>

Q:カンボジアの大学院へ進んだ経緯を教えてください。

A:22歳で大学を卒業した後、日本の就活に疑問を感じ、1年間オーストラリアにワーキングホリデーで行きました。その後は、オーストラリアの大学院で会計学を学べば永住権が取得し易いと知り、そうしたいなと考えていましたが、帰国後、今思えばですが、オーストリアでの楽しかった思い出にすがっていた自分と、何者でもない小さな存在なのに何者かになりたい自分、そのギャップに大海原で溺れるかのごとくもがきまくっていました。日本の閉塞感も重なり軽いうつ状態となってしまいましたが、楽観的な性格が功を奏し、気分も一新し一旦日本で就職しました。働きながら自分よりも仕事のできる人がたくさんいることを知る中で、サラリーマンとして会社の歯車として生きていくのが無難なのかなぁとも考えたりしました。

しかし26歳の時に脳内出血を起こした際に、自分の人生に何も残せないまま死んでしまうのは嫌だ。いつか子供ができた時に何か自分の物語を語れるものが欲しい、と思うようになりました。その為に色々と考えながら、自分が少しでも他とは違う”当たり前ではない”道を模索しはじめ、 28歳の時にカンボジアの大学院へ進学しました。学生時代を含め、何度かカンボジアには旅行で来ていて、カンボジアは僕にとって身近な国となっていました。カンボジアを訪れる中で、また当時の浅野家は家業の倒産もあり人間関係のぎくしゃくさなども重なり、カンボジアで出会った人々の人生を素で楽しむ姿を介し、「経済的な豊かさ≠心は豊」と考えるようになりました。そしてなぜカンボジアを貧しいと決めつけていたのか、など今までに無い疑問とともに、どんどんカンボジアを好きになっていました。

Q:カンボジアの大学院で開発学を学ばれたと思うのですが、なぜ、現在のアパレル会社を立ち上げることとなったのでしょうか?

A:カンボジアの大学院では、貧困の原因や対策などを勉強する開発学を専攻していました。その当時、社会起業家と言う言葉が脚光を浴びており、僕もそこ言葉に憧れを抱いた一人でした。その当時、アパレル関連なんて未知の領域でしたし、その仕事をしたいとは少しも考えておらず、とにかく“何か”を立ち上げなければ、との想いでした。

そして在学中に感じた違和感がありました。それは貧困を救済するというよりは、寄付をいかに有効的に集めるかが主題のような授業に思えたのです。支援から得られるお金に依存している人々がいて、カンボジアが貧しいからこそ収入を得ている人もいる。カンボジアが貧しさから脱却したら困る人もいる難しさと、そしてカンボジアが貧しさの切り売りをしているようだな、と思いました。日本から見ていたら人助けをしているように見えた活動も、カンボジアから見たら「あれ、ちょっと違うな」と思うようになっていました。

僕がカンボジアに初めて2002年に来て以来、カンボジアのイメージが変わっていない理由がここにあるのかな、と。

そんなことを考えていくと、ネガティブなイメージではなく、ポジティブなメッセージと共にカンボジアの素敵なモノを、世界に広めることでカンボジアの良さを知ってもらう事をしていきたいな、と。それが出来るのはビジネスの力が一番有効なのではないのか、そんな想いで起業を志すことになりました。

Q:なぜ、アパレルという分野を選んだのでしょうか?

A:カンボジアに来た当時、自分がこの仕事をするなんで少しも思っていませんでしたが、元々シャツが好きで、ご縁に恵まれた結果が今です。

日本から持って来ていたお気に入りの1万円くらいするシャツが汚れて、黄ばみが洗っても取れない状態になってしまっていました。それをクラスメイトに話すと、市内のテーラーに連れて行ってくれました。そこで作ったシャツは、これぞオーダーメイドと言ったサイズ感でカンボジアのクオリティーって想像以上にすごいなと実感しました。しかし、他のテーラーに行って作ってもらうとほつれがあったり、サイズが違ったりなどの問題がたくさんありました。プノンペン市内にはたくさんテーラーがあるけど注目度が低いのは、誰かにおすすめしたいと思うほどの驚きとハッピーがないのだろうと思いました。

そして、幸運なことに時を同じくしてプノンペンに縫製工場の進出をする社長さんと仲良くなりました。そこで出会った日本人の技術指導の方からアパレル業界や型紙のいろはを教えてもらい始めたのがSuiJohの始まりです。そしてこの国が発展していく中で、カンボジアとしてのアイデンティティーを示し続けることができれば、との思いもあり、カンボジアの伝統的なスカーフ”クロマー”をシャツの袖や襟の裏、カバンの中の生地として使うことで、伝統も日常に取り込めたらと考えています。

↑インタビュー中の写真

<Sui-Johを立ち上げてから>

Q:浅野さんがハンドメイドにこだわっている理由は何ですか?

アパレル業界は今後、ますます二極化すると思っています。ファストファッションみたいな物作りか、その対極の背景が分かるような物作りか。

その過程で、どんどんITが進歩していっていて、人を介さない買い物も増えてきているとおもいます。でも人って結局は人が必要だと思うんです。僕の好きな言葉で「In to the wild」と言う映画の一節ですが「Happiness is only real when it is shared」って言葉があるんですが、やはり人って誰かと感情を分かち合いたい生き物だと思います。IT化が進もうとも、人との繋がりで笑顔がうまれる瞬間は無くならないと思います。そんな瞬間をシャツやカバンを介して、お届けしていきたい。

加えて、例えば落ち込んだ時や疲れた時に、空でも見上げた時に「あぁ、カンボジアかぁ」ってちょっとした余白が心にうまれるようなモノづくりをしたいです。

私自身が人に救われて生きて来たと思いますし、きっと人が好きなんだと思います。背景で多くの人が協力し合っている、それを伝えることができるのが今のハンドメイドのSuiJohです。

Q:SuiJohのロゴに対する思いは?

7割が水で覆われた惑星、それが地球です。太古の昔か僕らの先祖は冒険を、貿易を、新しい出会いを繰り返してきましたと思います。海を越え、川をのぼり、水の上を伝えば、きっとどこでもたどり着ける。まだ見ぬ未開の地に想いを馳せ、水の上を伝ってどこまでも進んでいこう、そんな想いで生まれました。

Q:働くうえでのやりがいはなんですか?

A:日本ではあまりない想像を超える問題が起こるなど、RPGゲームをやっているようなわくわく感を感じることができることです。この試練、どう乗り越えよう!?と。さらに言えば、自分たちのお店でもやり方によっては、何かのオンリーワン、ナンバーワンを取ることができるのがカンボジアではないかなと感じており、それがやりがいとなっています。

↑「Sui-Joh」のロゴと鞄

<今後の展望>

Q:新型コロナによるビジネスへの影響と今後について

A:シェムリアップ2店舗目となるオールドマーケットに店を出す事を1月に決め、オープンの直前まで来ましたが、新型コロナウイルスの影響によって2店舗とも完全撤退をしなければいけなくなったのと、プノンペンのイオン2のお店も閉めました。コロナの影響がなければ、現在5店舗となってしました。世界の人々と更なる出会いがあるはずでしたが、今は2店舗となってしまいました。私の好きなもうひとつの言葉で 「人生とは何かを計画している時に起こる別の物語」というものがあるのですが、まさにこのとおりだなと痛感させられました。

現在は欧米含め、発送ができるようなウェブサイトの活用の事前準備、そしてカンボジア人マーケットもどんどん入り込んでいきたいと考えています。

<浅野さんが考える異国の地カンボジアで感じた 日本との違い>

もう6年くらい前のクメール正月の前の出来事です。シャツの縫製を委託していたテーラーさんでお正月前のパーティーをしました。その際に「日本にいつ店を出すの?もし出すなら日本で働きたい」とみんな日本に行く気満々で、毎日のように会っている彼らとは信頼関係が築けていると信じていました。しかし、正月が終わっても誰も田舎から帰ってこないのです。電話にも応答してくれず、それを機に日本とカンボジアの違いについて考えるようになりました。こっちでビジネスをしている日本人からカンボジア人がすぐ仕事を辞めてしまうという話はよく聞いていましたが、実際、それが自分に起こったのです。日本とカンボジアの違いを考えに考えた結果、日本にあってカンボジアにはないモノが1つある。それは四季です。四季が人間形成の当たり前を大きく変えていて、日本人にとって冬を耐え忍ぶことが我慢することに繋がっているのでは、と個人的に思っています。日本では「石の上にも3年」という言葉があるように耐える美徳があります。でもカンンボジア人には僕らのその美徳は通用しません。

冬は人間にとって絶対的なモンスターで、ラスボスだと思うんですよ。冬を越さないと命が途絶える。それを越すためにどのようにしたら生き残れるかを僕らの先祖は考えてきたと思います。その為にいかに収穫高をあげられるかなどなど試行錯誤の連続だったと思います。そして、その冬の次にやってくるのが春。それは耐えた後にはご褒美があるんだよ、と言う体験に繋がるとおもっています。

なので僕らは頑張った後にはきっと救われる!と思っている。でも、カンボジアは雨期はあれど一年中夏です。季節毎のフルーツが採れ、川では魚も捕れる。お米も沢山ある。そんな当たり前が違う中、僕らの当たり前は当たり前ではないんだな、と体験することで気がつきました。

Q:最後にお勧めの商品を教えてください。

A: SuiJohで一番人気の商品はオーダーメイドのシャツです。かばんも人気です。オーダーシャツに関しては、生地やボタンはもちろん、ロゴの色もお選びいただけ、店舗では採寸してのフルオーダーも可能です。現在は、コロナウイルスの影響で他国へ発送できませんが、発送できるようになったら、日本からでも注文できます。他にはぜひクロマ―をオススメしたいです 。カンボジアの伝統的なスカーフで、手ぬぐいや汗拭きタオル、枕カバー、抱っこ紐などなんでも使うことができる万能布です。そしてこれらのクロマーはSuiJohオリジナルの柄となっていて、他では手に入りません。

↑かわいらしいデザインが特徴のシャツ

↑「Sui-Joh」オリジナルのクロマ―           ↑「Sui-joh」の鞄

🔍「Sui-Johオンラインストア」

<経歴>

浅野 佑介様

出身:愛知県

学歴:中部大学経営情報学部卒業、ノートン大学大学院 開発学部

座右の銘:青春の夢に忠実であれ / Happiness is only real when it is shared

趣味:サウナ、マッサージ、カフェ巡り、読書、旅、仕事

カンボジア歴:2001年3月初訪問、2010年9月より在住

<会社説明>

アパレル会社「SuiJoh」

URL: http://suijoh.com/